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1型糖尿病(インスリン治療を必要とする)幼児の幼稚園・保育施設への入園取り組みガイド

1型糖尿病(インスリン治療を必要とする)幼児の幼稚園・保育施設への入園取り組みガイド

1型糖尿病の子どもは適切なインスリン治療を行えば、健常児と全く変わらない生活ができます。さらに、1型糖尿病患者さんの中には、医師や看護師として働いている方も多いですし、プロ野球選手やプロサッカー選手もいます。自立した成人に成長してもらうことが、1型糖尿病の診療に携わっている医療者の目標です。しかし、1型糖尿病は日本ではまれな疾患のため、社会・学校での認識が乏しい現状があります。日本人小児の1型糖尿病の年間発症率は10万人に約2.5人ですが、欧米白人ではその10~30倍です。

2015年12月24日の毎日新聞に、近畿圏を中心とした患者団体を通して行ったアンケートで 、就学前に1型糖尿病を発症した67人のうち16%にあたる11人が「幼稚園や保育園への入園を断られた」といい、「難色を示された」6人を含めると4分の1がこうした体験があると報じられました。

2016年2月~5月に日本小児内分泌学会が学会評議員を対象に行った「1型糖尿病患児に対する幼稚園・保育所の入園拒否の実態」についてのアンケート調査においても、入園拒否があった症例を報告した医療施設は、42施設中 18施設(42.9%)で、患児数は164人中 37人(22.6%)でした。約4分の1の患児が入園拒否の通告を受けた経験があることがわかりました。また、継続通園や入園が許可されても、インスリン注射、血糖測定、幼稚園・保育施設の行事に際して、保護者への負担が非常に大きい実態が明らかとなりました。1型糖尿病では血糖値を管理する処置は必要ですが、運動や食事に制限はありません。私ども1型糖尿病の診療に携わるものとしては、患児やその家族を支えるために、幼稚園・保育施設の職員の方に1型糖尿病への理解を深めていただく必要性を痛感いたしました。

そこで、日本小児内分泌学会糖代謝委員会において、「1型糖尿病(インスリン治療を必要とする)幼児の幼稚園・保育施設への入園取り組みガイド」を2016年に作成しました。2年が経過し、インスリン治療の進歩を踏まえて、改訂第2版を作成しました。今回の改訂は、日本小児内分泌学会と日本糖尿病学会の共同で行いました。

このガイドは、幼稚園・保育施設の職員の方の持つ漠然とした不安を解消し、 保護者のインスリン注射、血糖測定、園での行事等についての 大きな負担を少しでも減らすことを目指して作成されました。職員の方にとっても、1型糖尿病についての情報が増えることにより、1型糖尿病の子どもとそのご家族に接する中で、最初は難しく感じたこと、高い壁も、次第に低くなると考えます。1型糖尿病の子どもが慢性疾患を抱えながらも健やかに成長し、楽しい幼稚園・保育施設での生活を過ごせるよう、皆様のご理解とご協力をお願いしたいと存じます。

 (日本小児内分泌学会ホームページ

更新:2019年7月31日