The Japan Diabetes Society

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東北支部

東北支部長ご挨拶

東北支部長 片桐 秀樹
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東北大学大学院医学系研究科
糖尿病代謝・内分泌内科学分野
片桐 秀樹

 糖尿病(おもに2型)は日本でも世界でも相変わらず増え続け、糖尿病の3大合併症(神経障害、網膜症、腎症)や動脈硬化症(心筋梗塞や脳梗塞)、歯周病などが患者さんの健康障害、生活の質(QOL)の低下、健康寿命の短縮をもたらしています。特に東北地方は、車での移動や長い冬の影響の為か、全国でもメタボリックシンドロームの多い地域であることが知られています。日本糖尿病学会はこのような糖尿病の成因や治療について研究し、その成果を発表、議論することで、糖尿病の予防やより良い治療に向けて活動しています。また、2011年3月11日の東日本大震災の際にはインスリン供給の支援などにもあたり、「東日本大震災からみた災害時の糖尿病医療体制構築のための調査研究委員会」(佐藤 譲 委員長)で震災時医療体制構築に向けた検討を進めています。

 糖尿病の治療法の進歩は近年めざましいものがあります。内服薬の種類も飛躍的に増え、ただ血糖値を下げることだけでなく、様々な糖尿病患者さんの病態に応じ全身各臓器の具合や将来の状況をも考慮した治療方針をたてることができるようになりました。また、インスリンアナログの開発により、作用時間が多岐にわたるインスリン製剤を選択できる時代になりました。さらに、インスリンポンプによる持続インスリン注入(CSII)や持続血糖測定(CGM)、さらにはそれらを組み合わせた治療法(SAP)の開発など、医療機器の進歩もまた治療法の発展に寄与しています。さらに、肥満手術や移植など、外科的視点からの治療も進みつつあります。また、東北初の世界に先駆けた多数の研究成果も得られており、さらなる医療の発展につながることが期待されています。

 このような背景のもと、私は、糖尿病診療は一般性と専門性に二極化しつつあると思っています。糖尿病治療薬の種類の増加は、今までよりも比較的容易に多くの患者さんの血糖値をコントロールすることを可能としつつあります。一方で、患者さんの病状によっては、高度な専門性を求められる場合も少なくありません。どんどん増え続ける糖尿病の患者さんすべてを糖尿病専門医が常時診察するのはむずかしいところです。しかし、糖尿病の病態の中には、糖尿病専門医ならではの知識や技量を必要とする患者さんもいらっしゃいます。また、同じ患者さんでも、病状によって、糖尿病専門医が深く関わる必要がある時期とそうでない時期もありえます。特に糖尿病の専門医が不足している東北地方では、専門医を増やすことはもちろん、非専門医との連携を強化し、糖尿病患者さんの増加と専門性の高度化の両方に対応する方向性を示す必要があると考えています。

 糖尿病は、症状なく進行する疾患です。見方によっては、非常に怖い疾患ですが、症状のない状況で進行を抑制することができれば、大きな障害なく生活を送ることができるという考え方もできます。上記のように近年糖尿病の治療法は進歩し、また今も進歩し続け、患者さんひとりひとりの病態に即した治療法が選択できつつある時代になってきました。糖尿病の疑いがある場合は、症状がないからといって放置せず、しかるべき医療機関に受診し、適切な治療を受けるようお勧めいたします。

 日本糖尿病学会 東北支部は、東北地方の糖尿病の予防とケアーとキュアーに向かって邁進しています。ご支援、ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

更新:2024年4月22日