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糖尿病専門医とは

糖尿病専門医とは

はじめに

私たちは食べ物を摂取して栄養素を吸収し、肉体の維持や活動に使います。膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンは、栄養素の新陳代謝に大きな役割を果たしていますが、エネルギーとして使用される主要な栄養素である糖質の代謝では特に主役を担っています。糖尿病は、そのインスリンの作用不足によって高血糖(血液中のブドウ糖濃度が高い状態)を来たし、それによる様々な合併症を引き起こす病気です。ひとまとめに糖尿病といっても、原因や、重症度、併発する合併症などは人それぞれで大きく異なります。例えば、患者さんによってはインスリン治療が生命維持のために必須な場合があり、また、小児や妊娠中の糖尿病患者さんには特別な配慮のもとでの治療が必要になります。合併症も網膜症・腎症・神経障害・脳卒中・心筋梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症などと多岐にわたります。このように糖尿病の発症予防からその診断、そして生活のケアを土台にした薬物療法などによる治療まで、一人の患者さんを全身にわたって管理するためには、専門的な知識と診療能力が大きな力となります。

日本糖尿病学会は、糖尿病の予防から治療まで皆様が安心して診療を受けられるよう、糖尿病に関する専門知識と診療能力を持った「糖尿病専門医」を養成し、認定しています。以下に糖尿病専門医がどのような医師であり、どのような活動を行っているのか、簡単にご紹介します。

1. 糖尿病専門医とはどんな資格?

内科あるいは小児科で規定の研修を終えそれぞれの学会の認定医や専門医の資格を持った医師が、糖尿病に関する専門的な研修を更に3年以上受けて、経験症例のレポートを提出し、専門医試験(筆記と面接)に合格すると「糖尿病専門医」の資格を取得することができます。この3年間の研修期間中には学会の認定した施設において、指導医のもとで患者さんの診療、指導や教育に携わり、必要とされる様々な診療経験を積みます。

「糖尿病専門医」は資格取得後も最新の知識や技能を維持・獲得するための研鑽を継続し、5年ごとに一定の審査を経て資格を更新する必要があります。更新のためには、糖尿病に関連する学会に参加し、教育講演を受講し、また、担当する糖尿病患者についての診療内容や指導歴の報告が必要とされます。

このような認定を受けている糖尿病専門医は、専門的知識をもとに質の高い糖尿病の診療や患者さんへの指導を自ら行うだけでなく、糖尿病診療チームのリーダーとしても院内で活動するとともに、糖尿病を専門としないかかりつけ医と連携して患者さんの診療や診療に関する助言を行うことで、地域の糖尿病診療においても重要な役割を担っています。

2. 糖尿病専門医を受診するには?

糖尿病専門医は、日本全国の医療施設で「糖尿病科」、「糖尿病内科」、「内分泌代謝内科」などの標榜を掲げて専門的な診療を行っています。「内科」の中で専門診療を行っている場合もあります。各医療機関で相談いただくか、または、各地区の専門医と所属施設名については糖尿病学会ホームページからご自身で検索することも可能です。
日本糖尿病学会ホームページ : 専門医検索

糖尿病専門医は、診療所やクリニックでは専門的な外来診療を、病院では様々な病状の患者さんの入院診療と外来診療を行っています。このような施設では、糖尿病専門の看護師や薬剤師、栄養士、理学療法士、検査技師など、多くのスタッフと一緒にチームを組んで患者さんの診療に当たります。糖尿病や合併症の状態を詳しく検査し、患者さんに食事療法や運動療法を体験していただき、さらに糖尿病について学んでいただくためのいわゆる「糖尿病教育入院」も行っています。

糖尿病患者さんは、血糖値や、HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)などを参考に、血糖のコントロールが良好であること、また、合併症がなく、安定していることについて定期的に確認を受ける必要があります。

これらにより、病状が安定していれば、糖尿病の診療は一般のかかりつけ医のもとで受けて頂けることも多くあります。糖尿病専門医は、かかりつけ医と連携を取って診療を行っています。

糖尿病専門医への受診を希望される際には、かかりつけの主治医にご相談の上、糖尿病専門医の外来へ紹介をして頂きましょう。

3. 糖尿病専門医によるセミナーを受講するには?

日本全国で糖尿病についての参加費無料の講演会・セミナーが開催されています。糖尿病に興味のある方は是非ご参加ください。

  1. 市民公開講座
    日本糖尿病学会では、年1回の総会や各支部における地方会で、患者さんや一般の方を対象とした「市民公開講座」を開催しています。
  2. 世界糖尿病デー・糖尿病週間
    11月14日は国連により「世界糖尿病デー」と定められており、糖尿病についての様々な啓発活動を行っています。11月上旬~中旬にかけて、日本各地で世界糖尿病デーにちなんだブルーライトアップイベントや講演会が開催されています。
    ( 世界糖尿病デー : http://www.wddj.jp/
  3. 糖尿病教室
    糖尿病専門医が勤務する医療施設では、定期的に糖尿病についての勉強会が開催されています。各施設により開催頻度や内容が異なりますので、個別にお問い合わせください。

おわりに

糖尿病専門医について簡単にご紹介しました。

糖尿病についての情報は、日本糖尿病協会からも詳しく提供されています。ホームページを参照してください( 日本糖尿病協会ホームページ : はじめての方へ )。日本糖尿病協会の活動の1つとして糖尿病患者の会「 友の会 」が全国各地に作られています。患者とその家族、医師、看護師、栄養士などの医療スタッフで構成されており、「友の会」に参加し、他の患者さんと交流を持ち、糖尿病について定期的に情報を得ることもできます。

日本糖尿病学会は、糖尿病とその合併症の原因解明、発症予防、新しい治療法の開発に注力するだけでなく、糖尿病専門医の認定を始めとした糖尿病診療の向上や糖尿病に関する知識の普及、予防のための啓発活動など、患者さんや一般の皆様に向けたさまざまな社会貢献にも取り組んでいます。皆様のご理解とご支援を何卒宜しくお願い申し上げます。

更新:2017年9月7日