The Japan Diabetes Society

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理事長挨拶

理事長挨拶

理事長 植木 浩二郎

一般社団法人 日本糖尿病学会 
理事長 植木 浩二郎

国立国際医療研究センター研究所
糖尿病研究センター長

この度、一般社団法人日本糖尿病学会の理事長を拝命致しました国立国際医療研究センターの植木でございます。私は本学会の理事長としてちょうど10代目にあたりますが、日本糖尿病学会は1957年の創立以来、「糖尿病学の進歩・発展を図り、国民の災害を防止すること」を目的として活動して参りました。この目的達成のため本学会は、糖尿病に関する様々な調査研究事業、糖尿病学や診療の進歩を図りそれらの最新の知識の共有のための年次学術集会をはじめとする学術集会の開催、会誌(和文誌「糖尿病」、英文誌「Diabetology International」)・「糖尿病診療ガイドライン」・「糖尿病治療ガイド」などの出版事業、糖尿病やその合併症の予防および重症化阻止を担う糖尿病専門医の育成、国際糖尿病連合やアジア糖尿病学会・欧州糖尿病学会をはじめとする海外の学術団体および我が国の学術団体との交流・共同事業、国民に対する糖尿病の正しい知識の普及・啓発、糖尿病学の発展に貢献した研究者・医師・医療スタッフおよび今後の糖尿病学の将来を担う若手研究者や医療スタッフに対する顕彰活動などを行っており、現在正会員17,799名、糖尿病専門医6,174名(ともに2020年7月20日時点)を擁しております。

この30年ほどの間に、糖尿病の成因や病態のメカニズムの解明や、新たな薬物療法・新たな治療デバイス・モニタリングデバイスの登場によって、血糖コントロールや合併症のリスク管理は以前より容易になってきました。また、国民の健康意識の向上や特定健診・特定保健指導の普及などによって、糖尿病の予備群と考えられる人は減少し新規の糖尿病患者も減少傾向にあるように思われます。しかしながら、糖尿病を治癒させる治療法は今のところありませんし、病態に合わせた治療法の細やかな選択も必要です。何より、患者さんの生活習慣の改善をはじめとする行動変容・努力が必要です。残念ながら、科学的根拠に裏打ちされ患者さんの病態や社会環境を考慮して個別化された食事療法や運動療法についての研究は、まだまだ進んでいません。さらに、我が国の急速な高齢化にともなって、糖尿病患者さんも高齢化しており、サルコペニアやフレイルあるいは認知症などの老年症候群と糖尿病の適切な治療との両立あるいはこれらの併発症の進展防止をどのように行えば良いかは大きな課題です。これらの課題の克服には、EMR (electronic medical record)とPHR (personal health record)との融合によるビッグデータの収集と分析、これらの所見と臨床研究・基礎研究の統合によって、真のprecision medicineの創出が必要です。また、まだまだ社会あるいは患者さん自身に残るstigmaも糖尿病患者さんの重症化につながる要因であり、日本糖尿病協会をはじめとする関係団体とも協力してその払拭に努めてまいりたいと思います。

日本糖尿病学会では、2004年からほぼ5年ごとに対糖尿病戦略5ヵ年計画を発出しており、2010年にはアクションプランDREAMS: 1. 糖尿病の早期診断・早期治療体制の構築(Diagnosis and Care) 2. 研究の推進と⼈材の育成 (Research to Cure) 3. エビデンスの構築と普及 (Evidence for Optimum Care) 4. 国際連携 (Alliance for Diabetes) 5. 糖尿病予防 (Mentoring Program for Prevention) 6. 糖尿病の抑制 (Stop the DM)を策定し、その実現に向けて活動しており、本年発出の第4次対糖尿病戦略5ヵ年計画もこれらを具体化したものです。第4次糖尿病戦略5ヵ年計画には、災害によって糖尿病治療が困難となった場合の対策や、コロナに対する糖尿病患者さんの重症化の可能性の検証と対策、コロナ流行時の適切な診療方法の検討など、近年深刻化している諸問題に対する適切な対策も本学会に課せられた任務として取り上げています。今後これらの対策にも学会をあげて取り組んでいく所存です。皆様の温かいご支援をお願い申し上げます。

2020年7月吉日

更新:2020年7月21日