糖尿病ってどんな病気?

糖尿病とは、「インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに血糖値が普段より高くなっている状態」と定義されますが、これでは糖尿病のことをよくご存じない方にははあまり理解できません。この定義を理解するために、以下に解説します。

(1) インスリンのはたらき

私たちは食物から栄養を摂取して生命を維持しています。食物の成分のなかで、体のエネルギー源となるものに炭水化物、脂質、たんぱく質がありますが、多くの人はこの3大栄養素のなかで、炭水化物を最も多く摂取しています。ごはん、パン、麺類などが多く炭水化物は含む食品の代表格ですが、これらの食品を摂取するとそのほとんどが消化によって腸の中でブドウ糖となり、小腸から吸収されて血液のなかに入ります。すると血液中のブドウ糖の量(血糖値)が高くなります。 (血糖値というと血液中の糖分全体を指すように感じますが、実は血液中のブドウ糖の量のことを血糖値といいます。検査結果のなかには血漿ブドウ糖値と表記されることもありますが、血糖値と同じ意味です)
健康な人の場合、食事をして血糖値が上がりやすいこのような状況でも、血糖値は適度な範囲にコントロールされ、過剰に増加しません。血糖値が上がると、その変化を膵臓に存在する膵β細胞(図1)が感知してインスリンを血中に出すからです。インスリンには血漿のブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込ませる作用があるため、結果として、食後に血糖値が上がりすぎなくするように作用します(図2)。一方、空腹時のインスリンは低い値で維持されるため、ブドウ糖が筋肉や脂肪に必要以上に取り込まれることはありません。これらの作用を介して、血糖値は空腹時でも食後でもちょうどよい範囲である70mg/dlから140mg/dlに保たれています。
膵臓とインスリン
図1:膵臓とインスリン
(日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療の手びき2020(改訂第58版), p2, 南江堂, 2020)
食事とインスリンの働き
図2:食事とインスリンの働き
(日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療の手びき2020(改訂第58版), p3, 南江堂, 2020)

(2) 糖尿病とは

上述したインスリンのはたらきを理解していただくと、糖尿病の定義である「インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに血糖値が普段より高くなっている状態」が理解できると思います。インスリンの作用不足が、その根本の原因となりますが、それには、インスリンの分泌が少なくなるタイプと、インスリンによるブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込ませる作用が低下するタイプがあります。多くの糖尿病の方では、その両方(インスリン分泌不足とインスリンの効きの低下)の異常が認められます。いずれにせよ、糖尿病ではインスリンの作用低下から血糖値が増加しますが、この血糖値の増加が、全身にいろいろな影響を与えます。

(3) 糖尿病の分類

糖尿病はそれが起こる原因により4つのタイプに分類されます。そのなかで、主なものは1型糖尿病と2型糖尿病です。

A) 1型糖尿病

1型糖尿病では膵臓のランゲルハンス島に炎症がおこりインスリンを作る膵β細胞が壊されます。その結果、インスリンの量が足りなくなり、ブドウ糖が細胞に取り込まれなくなることで血糖値が上がります。1型糖尿病の原因はまだはっきりしていませんが、遺伝因子やウイルス感染などが誘因となり、“自己免疫”と呼ばれる機序(外から体に入ってきた細菌やウイルスを攻撃して本来体を守る“免疫”という仕組みが、自分の膵β細胞を壊してしまう)が関与していると考えられています。多くの方で、外からインスリンを注射しないと生命の危機に瀕するようなインスリン欠乏状態となります。

B) 2型糖尿病

2型糖尿病ではインスリンによる血糖低下作用が低下していることと、膵β細胞からのインスリン分泌が不十分なこと、その両方の異常があり血糖値が上がります。2型糖尿病の原因もはっきりしていませんが、遺伝因子とともに生活習慣・外部要因などが関与して発症すると考えられています。2型糖尿病は1型糖尿病よりもゆっくりと気づかないうちに発症しゆっくりと進行する場合が多いです。治療にインスリンを必要としないケースも多々あります。

(4) 糖尿病の症状と問題点

血糖値が増加すると、のどが渇く、たくさん水分を飲む、たくさんおしっこが出る、などの症状がみられる場合があります。また、体重が減少したり、体がだるいと感じたりすることがありますので、このような症状や兆候がある場合には糖尿病を疑ってみる必要があります。また、多くの糖尿病で認められるインスリンの効きの低下と血糖値の増加は、体の血管を傷つけ、さまざまな臓器障害を引き起こします。したがって、糖尿病と診断された場合には、これらの合併症を予防するために、適正に治療をする必要があります。
より詳しい内容は、日本糖尿病学会の発行する「糖尿病治療の手びき」を参照してください。
糖尿病治療の手びき
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更新:2021年9月2日