糖尿病医療者・研究者の「多様なキャリア」を応援する

それぞれのストーリー

山田 倫子(Tomoko Yamada)

山田 倫子(Tomoko Yamada)

 

所属

神戸大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科

子どもたちに背中を押されながら
―糖尿病医療者として育てられてきた日々―

「糖尿病医療者の子育て奮闘記」というテーマをいただき、何を書けばよいのだろうと悩みました。私は、胸を張って語れるような特別な子育てをしていませんし、仕事と家庭を上手に両立してきたという実感も全くありません。三人の息子と、医師である夫との生活は、いつも予定通りにはいかず、「今、目の前にあることを一つずつこなしている」というのが正直なところです。
それでも振り返ってみると、子どもたちの姿に励まされ、自分自身も何度も背中を押されてきたように思います。長男は野球を通じて、毎日練習を続けることの大切さを教えてくれました。少しずつヒットが打てるようになり、それが本人の自信につながっていく姿を見て、親として応援したいと思うと同時に、私自身ももっと頑張りたいと思うようになりました。次男は、一度「やる」と決めたことに対し、驚くほど集中して努力し、最後までやり遂げる力があります。その姿には、親でありながら素直に尊敬しています。三男は、末っ子らしく本当にかわいい存在です。親の忙しさを彼なりに理解しながらも、「こうしてほしい」と自分の気持ちを伝えてくれます。時にはわがままが過ぎて拗ねてしまうこともありますが、それも成長の途中なのだと思い、私自身も少し気長に待つことを学んでいるところです。
仕事についても、最初から明確な将来像があったわけではありません。まずは目の前の診療をきちんとできるようになりたい、糖尿病・内分泌の専門医を取得したい、という思いで日々を過ごしていました。当時の私は、要領よく診療を進めるとは程遠い診療をしていましたが、先輩の先生方は私の理解力に合わせて根気強く指導してくださいました。保育園のお迎えの時間までは自分で患者さんを診て、それ以降は引き継げるような環境も作っていただきました。同じ専攻医だった夫は帰宅が遅い日も多く、帰宅後は子どもたちと過ごしながら、翌日までに病態や治療方針を勉強し、患者さんに説明できるよう準備する必要がありました。思うように時間が取れず、しんどいと感じることもありましたが、「自分で診る」という環境を与えていただいたことが、少しずつ自分の成長につながっていったように思います。
大学病院勤務は新たな刺激の連続でした。研修医・学生の指導など教育に関わる機会が増え、また、病棟の経験症例や日常診療の疑問を学会発表としてまとめたことをきっかけに、臨床研究の魅力も教えていただきました。目の前の患者さんから生まれた問いを、多くの患者さんのデータで検証し、その結果をまた診療に還元していく過程は、糖尿病・内分泌診療の奥深さを改めて感じさせてくれました。

山田 倫子(Tomoko Yamada)
医局員集合写真
筆者:1列目、右から3番目

現在は大学教員として、診療・教育・研究に加え、病棟運営等、様々な業務に関わるようになりました。また、自分自身が支えていただきながら働いてきた経験から、専攻医や若い先生方が働きやすく、学び続けられる環境づくりにも少しずつ関わっていきたいと思うようになりました。ダイバーシティ推進に関わる委員会での活動も、自分にとって大きな刺激になっています。責任を感じる場面は増えましたが、立場が変わったからといって、一人で何かができるようになったわけではありません。仕事も家庭も大切にしたいと思いながら、どちらかがおろそかになっているように感じたり、どちらも十分にできていないと自分を責めてしまったりする瞬間があります。そんな日は、家事が一段落した後、「今日はここまで」と自分に言い聞かせ、好きなことをすることもあります。最近になり、自分の時間を少しでも持つことも、働き続けるためには大事なのだとようやく思えるようになりました。
困っている時に手を差し伸べてくれる同僚、悩みを相談できる上司、日々一緒に患者さんを支えてくださるメディカルスタッフがいます。家庭でも、義両親には本当に力になっていただき、正直頭が上がりません。同じ医師である夫は、一番身近な子育て・仕事の相談相手です。離れて暮らす両親も、遠くからいつも応援してくれています。そのすべての支えに、心から感謝しています。
糖尿病診療に携わっていると、患者さんもそれぞれの立場で悩みながら生活されていることを感じます。私自身も、色々な年代・立場の方々に助けられながら生活し、仕事を続けてきました。その経験を通して、患者さんの悩みに以前よりも共感できる瞬間が増えたように思います。誰にでも、頑張れる時期とそうでない時期があります。大変な時には、「今は無理をせず、まずは現状維持を目指しましょう」と声をかけることも、糖尿病医療では大切なのだと感じています。
子どもを育てているつもりで、実際には私自身が、子どもや家族、職場の先生方、スタッフの皆さんに育てていただいてきたのだと思います。すべてを完璧にすることはできませんが、その時々で目の前のことを一つずつ続けていくことが、今の私にできることなのだと思います。これからも周囲の力を借りながら、糖尿病医療と向き合っていきたいと思います。そして、診療・教育・研究がつながる糖尿病医療の魅力を、少しでも多くの医療者や研究者に感じてもらえたら嬉しいです。

山田 倫子(Tomoko Yamada)

更新:2026年6月12日

※所属は掲載当時のものです

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