山田 哲也(Tetsuya Yamada)

所属
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 分子内分泌代謝学分野(東京科学大学病院 糖尿病・内分泌・代謝内科)
先日、「未来の糖尿病研究者」をテーマに「それぞれのストーリー」コーナーへの寄稿をご依頼頂きました。どうしたものかと思い悩んだあげく、私のストーリーを書いてみることにしました。
私は広島県で生まれ育ち、山口大学を1996年に卒業しました。当時は初期研修医制度もなく、すぐに山口大学第三内科(岡 芳知 教授。糖尿病・内分泌・代謝疾患、血液疾患、アレルギー・膠原病を診療)に入局し、5月の連休明けから病棟での研修がスタートしました。
指導医の田尾 健先生、江本政広先生を始め諸先生方にご指導頂き医師としての生活が始まりましたが、目の回るような忙しさとは、このことか実感しました。
その中で、日々の診療はもちろんのこと、毎週火曜日の教授回診(午前)・カルテ回診(午後)に向けて、前日のカンファレンスで個々の患者さんの病態を完全に把握できるまで教えて頂いたことは、具体的な知識もさることながら、私の医師としての姿勢の基本となりました。
また、最初期に担当した骨髄異形成症候群の患者様のことは今でも忘れられません。6月初旬に同胞の方からの骨髄移植が行なわれ、一般病棟と別階の無菌室の往復は数知れず、術衣に着替えての無菌室の掃除を行なったことなども鮮明な記憶として残っています。
何とか大過なく、術前の化学療法と放射線照射を行い骨髄移植は無事行えましたが、血球が立ち上がるまでの約三週間は毎日が祈るような日々でした。幸い無菌室から一般病棟に転棟となられ秋を前に退院されました。
二年目は山口県立中央病院(当時)に赴任し、篠原健次先生、井上 康先生のご指導の下、病棟を駆け回りながら多くの糖尿病・内分泌・代謝疾患、血液疾患、アレルギー・膠原病の患者様の診療を経験しました。
また、症例報告についても多大なご指導を頂き、考察を深めることや広く批判を受けることが、独善を避けることにも繋がることを学びました。
1998年に山口大学大学院に入学、岡先生に勧めて頂いた東京大学第三内科(当時)に国内留学することになりました。
ここでは片桐秀樹先生(現 東北大学 糖尿病代謝・内分泌内科学分野 教授)にマンツーマンで研究者としての基本をご指導賜りながら、白色脂肪細胞のインスリンシグナルをテーマに研究を行いました。
3年の国内留学を終えて2001年の春に山口大学に戻りましたが、その年に岡先生が東北大学に異動されることになり、ポスドク以降も東北大学で、岡先生、片桐先生からご指導頂きました。
2001年に東北大学に異動した時は消化器内科と合同の医局を使用しており、研究スペースに余裕がありませんでしたので、病院の外来棟に十畳くらいのスペース(もともとは外来小手術室)とセットアップ研究費を頂き、片桐先生、石垣 泰先生(現 岩手医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科分野 教授)と私の三人で研究室の整備からのスタートとなりました。
大学院時代は培養細胞を用いた分子生物学実験しか行っておりませんでしたので、動物実験を開始し実験系を立ち上げるのは試行錯誤の連続でした。岡先生、片桐先生のご指導と研究室のメンバーの努力が初めて実を結んだのは2005年のことです。
その後、臓器間相互作用と糖・エネルギー代謝をテーマにした研究をさらに進めていきました。2011年の東日本大震災を経験し困難辛苦もありましたが、メンバーの粘り強い努力と岡先生、片桐先生のご指導のおかげでいくつかの研究は成果に繋がり、仲間と喜びを分かち合ったことは今でも忘れられません。
2018年に東京医科歯科大学(現 東京科学大学、2024年10月に東京工業大学と統合) 分子内分泌代謝学分野に異動し、糖尿病・内分泌・代謝領域の基礎、臨床研究を新たなメンバーと一緒に行っています。
これまで行っていない新しいテーマに取り組むと様々な試行錯誤が必要になりますが、メンバーと一喜一憂しているところです。

1996年に山口大学を卒業し第三内科に入局した時には予想もしていなかった各地を異動する人生を、時々の運命のままに送ってきましたので、あまり若手の先生の参考にならないかもしれませんが、こんなストーリーも面白いな、と思って頂けたら幸いです。
これまで常に診療と研究に並行して携わってきましたが、糖尿病領域の研究内容は、診療と直接的なつながりを実感できることも多く、診療に役立っていると感じていると同時に食わず嫌いをしないで研究を始め、また続けてきてよかったなぁ、と思っています。
略歴 | |
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1996年3月 | 山口大学 医学部医学科卒業 |
1996年5月 | 山口大学 医学部附属病院(第三内科)研修医 |
1997年6月 | 山口県立中央病院 内科医師 |
2002年3月 | 山口大学大学院 医学系研究科博士課程修了 |
2002年4月 | 日本学術振興会 特別研究員(東北大学) |
2005年4月 | 東北大学病院 糖尿病代謝科 助教 |
2008年9月 | 同(兼)病棟医長 |
2009年10月 | 東北大学大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 代謝疾患学分野 准教授 |
2013年6月 | 東北大学大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野 准教授 |
(兼)東北大学病院 糖尿病代謝科 副科長/病棟医長 | |
2018年4月 | 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 分子内分泌代謝学分野 教授 |
(兼)東京医科歯科大学病院 糖尿病・内分泌・代謝内科 科長 | |
2024年10月 | 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 分子内分泌代謝学分野 教授 |
(兼)東京科学大学病院 糖尿病・内分泌・代謝内科 科長 |
更新:2024年11月28日
※所属は掲載当時のものです