肥後 直子(Naoko Higo)

所属
京都府立医科大学附属病院
看護師を目指した理由
高校時代、将来を考えた時、たくさんの人の話が聞ける職業を選びたいと思いました。自分自身が話すのは得意ではありませんが人が話すのを聞くのが好きで、人間ウォッチングも好きでした。せっかく1度の人生ならば、どれだけたくさんの人と出会えるかが面白いと思い看護師を選びました。
糖尿病を持つ人に教えてもらったこと
今から約20年前のことです。私が糖尿病療養指導士を目指したとき、糖尿病を持つ人に知識を提供すること、その人が理解しやすいようにアレンジしながら知識を提供することが私の役割と思っていました。けれども、知識があっても行動できない状況の人、行動できない心理状態の人が多くいることを知りました。お決まりの方法では人の心が動かないことが身に染みてわかりました。そのような時に役立ったのが、糖尿病を持つ人との会話でした。
ある2型糖尿病の人は、面談の場面でこのように言いました。「私は、精神発達遅滞の施設でボランティアをしています。卓球は全くできないけれど、通所してる人は私を卓球に誘います。私が上手じゃなくてもいいんです。彼らは、私に卓球を教えるのが大好きです。いつもは人に教えられる場面が多い彼らです。人に何かを教えることが喜びでもあるんです。私が卓球が下手でも彼らは笑って見ています。教える喜びが彼らにあるのはいいことだと思いませんか?」糖尿病を持つ人と私の関係に置き換えてみました。誰かに何かを教えることはある意味喜びで、教えられる人の喜びではないかもしれない。教えられる機会が多い人に、教える側の気持ちを経験させてあげたい。この人の言葉は私の心に響きました。
また、ある1型糖尿病の人は「1型糖尿病になったのが自分でよかった。妻は自由で自分を調整することが苦手な人です。1型糖尿病にもしなったら、自分よりももっと苦しんだでしょう。だから、自分が1型になったほうが全然よかったんです。」そんな風に考えたことがあるだろうかと思いました。ある種の病気の受け止め方であり、妻への愛情でもありました。
またある2型糖尿病の人は、「黒いチョコより、白いチョコのほうがカロリーが低いでしょう?だから、白を選んで食べるようにしています」と言いました。びっくりしました。実はホワイトチョコのほうがカロリーも脂質も高いのですが、白が持つイメージでその人はホワイトチョコを選択していました。おいしく食べたい、しかもカロリーを少しでも減らしたほうがいいだろうと考えた彼女なりの工夫でした。とても面白い考え方です。こんな風に私は色々なことを糖尿病を持つ人に気づかせてもらい、自分の引き出しをこっそり一杯にしているのです。
おわりに
私の看護人生も第2段階にさしかかりました。多様性の時代です。色々な考え方があります。糖尿病を持つ人を支援することに、糖尿病を持つ人の言葉が役立っています。糖尿病を持つ人の言葉に気づく感性を持ち続けたい、磨き続けたい、色々なことにチャレンジし続けたいと思っています。
*写真はIDF WPRでの一世一代のPoster oral Sessionです。これもチャレンジのひとつです。

更新:2024年4月16日
※所属は掲載当時のものです