寺崎 道重(Michishige Terasaki)
大学病院 診療科長補佐のワークライフマネジメント
所属
昭和大学医学部内科学講座 糖尿病代謝内分泌内科学部門 講師
昭和大学病院 糖尿病代謝内分泌内科 診療科長補佐
自己紹介
2006年昭和大学医学部卒業。同大学臨床研修医を経て、2008年昭和大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌内科学部門に入局。2008年山梨赤十字病院、2014年に都立荏原病院の地域医療を経て、2015年から2年間、スウェーデンのカロリンスカ研究所に留学しました。帰国後は2022年4月より昭和大学病院糖尿病代謝内分泌内科の診療科長補佐を拝命し、子育て世代の医師が安心して働ける職場環境作りに取り組んでいます。私自身も子供は3人(8歳、5歳、2歳)おり、妻は糖尿病内科専門医で現在は開業しています。今回は「糖尿病医療者の子育て奮闘記」のテーマで寄稿する機会を頂きました。
スウェーデン留学による意識の変化
①子育てに関する意識
留学中に現地で第2子誕生を経験しました。子育て環境の先進国であるスウェーデンでは男性の育休取得率は80%弱でしたが、当時(2015年~2017年)の日本は男性育休取得率3%未満という時代でした。当時は、スウェーデンで働いているとはいえ、男性の自分が比較的長い期間の育休を取るという概念がありませんでした。
ボスはスウェーデン人、フェローは欧州各国から来ている研究室でしたので、「子育ては2人でするものだから、仕事は休んで育児に参加するのが当たり前」と職場同僚や助産師さんからも言われ、2週間ほど育休を取ることにしました。児童館には平日にも関わらず、育休中と思われる多くの父親が子供を連れて来ていました。昼食時には併設されているキッチンで、子供のミルクや離乳食を作っていたり、カフェに行くと父親1人で乳児にミルクを上げていたりしていた光景に衝撃を受けました。そのような環境の中で生活していると、男性の育児参加が当たり前という意識に変化した気がします。
②働き方に関する意識
スウェーデンの働き方は裁量労働制であり、子供を保育園に7時30分に送り、15時30分に迎えに行く事も可能です。研究室の多くの同僚も17時過ぎには研究室から帰宅していました。長期休暇は夏至祭(6月)、夏季休暇(7-8月)、クリスマス休暇(12月)、スポーツウィーク(2月)、イースター休暇(3月)があり、家族と多く過ごす時間があります。一方で仕事の生産性はどうかというと、非常に高い事に驚きました。オン・オフがしっかりとあり、心身共に健康であると、個人としても組織としても仕事の生産性とパフォーマンスが高くなるのだと感じました。同僚も心に余裕があり、切磋琢磨していく非常に良い雰囲気の環境で働けたと思います。
また、スウェーデンでは共働き世帯が98%で、その背景には男性の高い育休取得率や育児参加、子育て環境の充実があるかもしれません。国の文化・歴史的背景が違うので一概には言えませんが、このような男性の育児に参加する意識や子育て環境の充実さは、女性医師・研究者の活躍のためのヒントにもなるのではないかと思います。
ワークライフマネジメント
今の若手の先生には、もしかしたら考えられないかもしれませんが、私が研修医の頃は、日勤→救急当直→救急日直等が1週間に3回などは当たり前で、これも医師として一人前になるための修行だと皆邁進していた気がします(高度経済成長期の先輩方の世代はさらにハードな環境だったかもしれません)。今では日本でも男性の育児休暇取得率も14%弱まで上がってきています。時代とともに働き方を取り巻く環境も大きく変化しており、『ライフのためのワーク』という価値観に、より変化している最中にいるのではないかと思います。私自身も妻の仕事に配慮し、お互いに役割分担をしながら、ライフのためのワークを模索中です。
ワークライフマネジメントと働き方を取り巻く環境は、その国や職場の文化・歴史・倫理観など長年積み重なって出来てくる事ですので、一朝一夕にはいかない事だと思います。それでも『ライフのためのワーク』の延長線上に自分と家族を含めた幸せがあると思いますので、その時その時の環境にアジャストしながら自身が実践していく事で、医局の若手の先生方の良い指標になり、働きやすい環境になるよう一端を担えましたら幸いです。
更新:2023年4月10日
※所属は掲載当時のものです