長尾 元嗣(Mototsugu Nagao)
大学病院医局長のワーク・ライフ・マネジメント
所属
日本医科大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・腎臓内科学分野 講師
日本医科大学付属病院 糖尿病・内分泌代謝内科 医局長
ルンド大学糖尿病センター Unit of Islet Cell Exocytosis 研究員
自己紹介
2004年に日本医科大学医学部を卒業後、東京女子医科大学病院での卒後臨床研修を経て、2006年に日本医科大学付属病院 内分泌代謝内科に入局。2012年に同大大学院を修了し、2015年~2019年にかけてスウェーデンにあるルンド大学糖尿病センターに留学しました。2020年からは日本医科大学付属病院 糖尿病・内分泌代謝内科の医局長を拝命し、自身を含む子育て世代の医師が安心して働ける職場環境づくりに取り組んでいます。
スペシャリストとしてのキャリアロスの恩恵
私は、現行の卒後臨床研修制度、いわゆる2年間のスーパーローテートが義務化された初年度に医師になりました。その間、消化器外科、内分泌外科、救命救急科、小児科、産科、眼科を1年半かけてローテーションし、研修後は母校である日本医科大学に戻りました。当時は血液・消化器・内分泌代謝の3医局が同居する巨大組織への入局であり、血液内科や消化器内科の病棟、内視鏡センター、離島への派遣が1年半も続いたので、医師になって最初の3年間は専攻科以外の診療ばかりをしていたことになります。その頃は、スペシャリストとしてのキャリアをロスしているような気がしてもどかしい思いもしましたが、そこで培われた総合的な対応能力が現在の私の診療に厚みをもたらしてくれています。
スウェーデン留学での意識変化
私が留学したスウェーデンは、言わずと知れたワーク・ライフ・マネジメントの先進国です。金曜日の夕方~日曜日にかけての週末はもちろん、イースター休暇、夏季休暇(夏至~7月)、クリスマス休暇、スポーツウィーク(2月)と多くの時間を家族と過ごします。また小さな子供がいる家庭では朝7時半に保育園に送っていき、15時半には迎えに行く必要があるため、仕事をするのは8時から15時までと労働時間も大変コンパクトです。では仕事の生産性はどうかいうと、これが意外なほどに高いのです。全てにおいて“やるべきこと”と“やらなくてもいいこと”の区別がしっかりとなされているため、自分が“やるべきこと”だけに集中して取り組むことができます。そして、“やるべきこと”をやる時に発揮される集中力は、“やらなくてもいい時にはやらない”という決断に由来することに気がつきました。
ライフがあってこそのワーク
帰国後、仕事に関しては“やるべきこと”の見極めと優先順位付けをしっかりと行い、できる限り勤務時間内に済ませるようにしています。その上で、家族との時間を大切にする、早寝早起きをする、適度な運動をする、四季折々の自然に触れるといったスウェーデン人のライフスタイルを真似していると、心身共に健康になり、集中力と創造力が高まってワークも充実してくるということが次第にわかってきました。これからも、そのようなスウェーデン流のワーク・ライフ・マネジメントを実践していきたいと考えています。そして今、コロナ禍を経て強く思うのは、ライフがあってこそのワークであり、その延長線上に自分も家族も幸せになれるキャリアパスが見えてくるのではないかという点です。それを医局長である私が身をもって示すことができれば、医局にいる若い先生たちの良い道標になれるかもしれません。
更新:2022年12月6日
※所属は掲載当時のものです