今村 美菜子(Minako Imamura)

所属
琉球大学大学院 医学研究科 先進ゲノム検査医学講座 准教授
皆様はじめまして、今村美菜子と申します。この度は貴重な寄稿の機会をいただきましたので、多様なキャリアを応援すべく私のストーリーをご紹介したいと思います。
1.私のこれまでと現在
私は1995年に九州大学を卒業し、九州大学第三内科[名和田新教授(当時)]に入局しました。初期研修後は糖尿病研究室に配属され、梅田文夫先生、橋本俊彦先生、井口登與志先生より糖尿病臨床と研究の両面でご指導を頂きました。学位取得後は一年間の市中病院勤務を経て米国ヒューストンにあるベイラー医科大学に留学し、Prof. Lawrence Chanのご指導の下代謝に関連する遺伝子のノックアウトマウス作成と表現型解析を行いました。2010年からは理化学研究所に入職、前田士郎先生(現琉球大学教授)のご指導の下ゲノム研究の世界に入り、以降2015年に琉球大学に赴任した後も2型糖尿病を主とする生活習慣病の遺伝要因の解明とその臨床応用を目的とするゲノム研究を継続しています。早いもので卒後25年以上が過ぎましたが、この間の基礎医学、臨床医学の進歩、そして、医療者を取り巻く環境の変化は目まぐるしく、現状維持は後退であると自身に言い聞かせる毎日です。
私は大学を卒業するまでは勤務医としての将来像しか持っておらず、研究者になるつもりは皆無でした。命ぜられるままに入学した大学院で初めて触れた研究の世界は思いの外自分に合っていたようで、大学院入学、留学、理研への入職など、何度か訪れた転機での決断の積み重ねの結果、紆余曲折を経て現在に至っています。人生とは全く予測がつかないものです。
2.多様性の時代におけるキャリア形成に必要なもの:自分軸
医療の高度化と専門化が進み、加えて、キャリアの多様性が尊重される今、以前にも増して「自分軸」を持つことが求められていると感じます。ここでの「自分軸」とは、他者の価値観や流行、世間の情報のみに囚われることなく自分視点で物事を判断・決定することであり、他者との間に健全な境界線があるという点で「わがまま」と一線を画しています。勿論このような視点は一朝一夕に築けるものではありません。
自分軸を築く方法は人それぞれかと思いますが、人生のどこかで「最大限に頑張る時期」を経験することがその一つかと思います。置かれた環境に応じた頑張りで十分であり、重要なのは自分視点でその努力を心底認められるかどうかです。自身のこれまでを振り返ると、なりふり構わず全力で頑張った時期に積み重ねた知識や考え方が自分の軸を支えてくれています。また、渦中にいると無駄な報われない努力に思えることでも、後で振り返ると自分の糧になっていた、いうことも多々あります。
3.女性研究者賞
2020年に、これまで継続してきた2型糖尿病のゲノム研究の成果に対して第二回糖尿病学会女性研究者賞を頂くことが出来ました。理研勤務時代よりご指導くださっている琉球大学の前田士郎教授を始め、九州大学第三内科、ベイラー医科大学で私の研究者としての基礎を築いて下さった先生方、ご指導ご協力くださいました共同研究機関の先生方には感謝の念に堪えません。
現在は様々な場面に所謂「女性枠」が設けられています。このことについては賛否両論あろうかと思いますが、私個人的には糖尿病学会に女性研究者賞という制度が新設されたことをまず嬉しく思い、受賞できたことに大いに励まされています。他の多くの賞と比べて年齢制限が厳しくない点もキャリアの多様性の観点から有難いと感じています。今後もこのような制度が継続され、多くの医療者・研究者の励みとなることを願ってやみません。

筆者は前列右から2番目
終わりに
限られた文字数で私の経験・考えの全てをお伝えすることは叶いませんが、少しでも皆様にお役に立てば幸いです。
更新:2022年12月6日
※所属は掲載当時のものです