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それぞれのストーリー

川野 義長(Yoshinaga Kawano)

川野 義長(Yoshinaga Kawano)

 

所属

慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科

自己紹介

慶應義塾大学医学部を2007年に卒業後、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科に入局し、糖尿病専門医として診療・研究・教育に取り組んできました。大学院卒業後、2018年から4年間、米国ニューヨークのコロンビア大学メディカルセンター微生物免疫学教室に海外留学し、2022年に帰国して、現在は出身医局に戻りスタッフとして働いています。留学中に二人の息子を授かり、やんちゃ盛りの男の子の子育て奮闘中です。

糖尿病を専門にしたきっかけ

元々祖母の糖尿病を治したいという思いが、きっかけの一つです。祖母は、病院嫌いで糖尿病の合併症に苦しんでいました。自分が北里研究所病院で糖尿病内科の初期研修をしていた時に、尊敬するオーベン医師に主治医をお願いした所、その医師に褒められる事が嬉しくて、祖母は楽しそうに病院に通うようになり、血糖は劇的に改善しました。同じ医者でも、語り方や接し方によって、こんなに人の行動は変容するのかと感銘を受け、糖尿病診療に興味を持つようになりました。

海外留学をした理由

大学病院で初めて受け持った症例が、高度肥満胃内バルーン留置術の周術期管理でした。しかし効果は限定的であり、いきなり現代医療の限界に直面しました。メタボリックシンドロームはドミノが倒れ始める前に対処しなければならないと実感し、インスリン抵抗性発症の最上流メカニズムに興味を持ち、研究の世界に飛び込みました。大学院時代に、肥満糖尿病発症の早期に腸管に炎症性の変化が起きる事に気付きました。しかし、腸管免疫と腸内細菌・食事との関係までは明らかにする事はできませんでした。一歩踏み込んで、腸管免疫の世界を極めたいと考え、その分野で先駆的研究をしていたコロンビア大学医学部微生物免疫学教室Ivaylo Ivanov博士に連絡を取り、海外留学しました。

留学中の子育て奮闘記

海外留学の魅力は「言葉のバリアがある中で、もがいて道を切り拓いていく点」にあります。研究だけではなく、出産・子育てに関しても同じことが言え、特別な経験となりました。当初は、コロンビア大学産科の定期受診でさえ英語でのやり取りに緊張しました。英語で分娩方法の判断を迫られた診察室での緊張感は今も忘れません。子供の発熱時に、どう相手に伝えれば病院を受診できるのか、妻と必死に作戦を練ったのもいい思い出です。出産費用の請求が雑で、長男の出産費用を全額自費で請求され、必死に英語でクレームをいれたのも今では笑い話です。日本では普通にできる事が、言葉のバリアがあると、全てのイベントが特別なものに感じます。それはマイナスな意味ではなく、非日常的な環境に身を置くことで、自分達の成長につながり、家族の結束を高めてくれたのだと、今は思います。

川野 義長(Yoshinaga Kawano)

留学中NYはコロナ流行の中心地でした。ロックダウン中は毎日死者数が発表され、家の外は救急車の音しか聞こえず、1日中家の中で長男の世話をしている時期がありました。その頃、長男はイヤイヤ期の真只中で、家でじっとしている事に限界がありました。感染の状況を見て、厳重にマスクをした上でセントラルパークを散歩する事だけが唯一の救いでした。ロックダウン解除後は、仕事を加速させたい時期と次男出産の時期が重なり、かなり忙しくなりました。長男の保育スクールの送迎は私の担当でしたが、調整しきれない事もありました。そんな時にマウスの飼育管理を手伝ってくれたのは、同僚のブラジル・台湾・ドイツ出身の研究者で、送迎に関しては、近隣に住む駐在や現地企業の日本人のご家族にも沢山サポートを頂きました。皆さんとは帰国した今も付き合いは続いており、一生の友人です。

アメリカでは、世界中から国籍、言語、文化が異なる人々が集まってきます。それでも、「子供はかわいい」「出産・子育ては大変」という価値観は世界共通で、子育てをする上で、お互いのダイバーシティを尊重して、助け合う土壌があった様に感じます。「互いの違いを認め合う心」こそが、ダイバーシティ実現の鍵だと実感しました。

医者になって17年、今は自分が医局の運営に携わる立場になりました。海外留学の経験を活かし、それぞれの医局員の事情を考慮して、オーダーメイドで各医局員のライフプランを立てていける、そんな医局にできる様、今後も取り組んでいきたいと考えています。

更新:2023年8月8日

※所属は掲載当時のものです

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