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それぞれのストーリー

藤坂 志帆(Fujisaka Shiho)

藤坂 志帆(Fujisaka Shiho)

留学で学んだこと
~あきらめないことの大切さ~

所属

富山大学学術研究部医学系 第一内科

経歴

2001年 富山医科薬科大学附属病院 研修医
2002年 富山県立中央病院
2003年 あさひ総合病院
2008年 富山大学大学院医学系研究科博士課程修了 
      富山大学附属病院 第一内科 医員 
2013年 ハーバード大学 ジョスリン糖尿病センターResearch Fellow
2016年 富山大学附属病院 第一内科 助教
2021年 富山大学学術研究部医学系 第一内科 准教授

家族構成

夫(医師)、長女、次女、三女

留学を通して学んだこと

 大学院生の頃、夫が半年ほどオーストラリアに留学する機会に恵まれました。当時長女はまだ一歳でしたので、私は専業主婦として同行しました。初めての専業主婦生活を満喫しながらも生き生きと働く夫の姿を見て、海外留学へのあこがれを抱きました。
 二女が生まれ、大学院を卒業しました。夫が「チャレンジしてみれば?」と背中を押してくれたこともあり、ある海外留学助成に応募しました。運よく採択されたのですが、受け入れ先のタイミングが合わずに辞退せざるを得ませんでした。涙ながらに上司である戸邉教授に報告に行ったところ、「助走は長い方が高く跳べるよ」と励ましてくださいました。
 約2年が経過し、もう自分には留学の機会はないと思いはじめた頃、ある当直の夜に日本糖尿病学会のホームページで別の海外留学助成の募集が目に留まりました。年齢制限ぎりぎりでしたが、「ダメ元で挑戦してみようかな・・・」と夫に相談し、ラストチャンスのつもりで応募しました。採択の連絡をいただいてしばらくしたところで三女を妊娠しました。渡米のタイミングを遅らせることとなり、「受け入れ自体を断られるかもしれない」、また「育児と両立できなかったらどうしよう」と不安でした。何週間も悩み、長い時間文面を考えてメールを送りました。数分後、「おめでとう。全く問題ないよ。」と留学予定先のボスからお返事がありました。真夜中でしたがうれしさのあまり、飛び上がって喜んだのを覚えています。今思えばこの日が私と私の家族の人生にとって大きな転機となりました。
 三女が産まれ喜びもつかの間、するべき準備の多さに途方に暮れました。また自分だけでなく、子供たちのことも含め心配なことが多くあり、「所詮無理なことをしているのではないか」と漠然とした不安がありました。いろいろな方に助けていただきながら一つ一つ解決し、同じタイミングで夫も留学が、そして長女と次女の小学校とプレスクールが決まり、家族で留学することができました。生後2か月の三女は最寄りの託児所に預け、3時間ごとに授乳に通いながら研究をしました。周囲には同じく世界各国から留学してきている同世代の研究者が多くいて、仕事だけでなく生活においても助け合いながら過ごしました。
 アメリカでは男女の働き方の差が小さく、研究所に搾乳室もあるなど子育てしながら働く環境が整っていました。ライフイベントを当たり前のこととして社会が受け入れ、女性が萎縮することなく胸を張って働くことができる雰囲気をあらゆる状況で感じました。家庭では夫が献身的にサポートしてくれ、子供たちは私よりずっとたくましく、すぐに新しい環境に慣れて約2年10か月の留学生活を終えることができました。ここでは書ききれないほど恥をかき、失敗もしましたが、そこで得た多くの経験は、家族一人一人にとってかけがえのない財産であり、全員が「あのとき行ってよかった」と話しています。
 留学を経験して私が学んだことは、あきらめないことの大切さです。未経験のことに挑戦するときは怖くて不安で、それが家族も巻き込むかもしれないとなると足がすくんでしまい、ついあきらめがちですが、思い切ってやってみると何とでもなるものです。うまくいかないことも後から思えば楽しかった、いい思い出です。家族それぞれの力を信じ、あきらめなかったことで得られた経験は、今の私の大きな支えとなっています。

★本文写真★

帰国して

これまで考えられなかったような様々な経験をする機会をいただき、戸惑いながらも研究、臨床、教育で多忙な日々を過ごしております。附属病院では医師のダイバーシティ推進室のスタッフとして、若手の先生方が男女を問わず自己肯定感をもってキャリアアップをめざせるようにお役に立ちたいと活動しています。

若手の皆様へのメッセージ

自分はいつまでも若手・・・と思っていましたが、気が付いたら医局でも学年が上から3番目になっていました。あっという間に時は過ぎていきます。「今だ」と思うチャンスがあったら、たとえ「今は難しいかもしれない」と思うことがあっても、あきらめないでチャレンジしてください。

更新:2023年4月10日

※所属は掲載当時のものです

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