糖尿病医療者・研究者の「多様なキャリア」を応援する

それぞれのストーリー

浅原 哲子(Noriko Satoh-Asahara)

浅原 哲子(Noriko Satoh-Asahara)

 

所属

国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部 部長
名古屋大学 環境医学研究所 メタボ栄養科学研究部門 特任教授

1.はじめまして。 医師になって早30年。曲がりなりにも糖尿病診療と研究を進めてこられたのは、数多くの素晴らしい先生方と興味深い研究テーマに出会うことができたからに他なりません。今回は『糖尿病医療者・研究者の「多様なキャリア」を応援する』のHPにおいて、私の経験が、何らかの応援メッセージになればと思い筆を取りました。

2.実は、九州大学医学部卒業前、私は内科に進むか、外科に進むかさえも迷っており、最初から糖尿病内分泌学の研究をしたい等の明確なVisionがあったわけではありませんでした。たまたま、国立京都病院にてレジデントとして研修していた際、ある納涼会で、糖尿病研究を主導されていた葛谷英嗣院長と隣になり、将来どうしていくのかと尋ねられ、思いつくままに「肝臓か糖尿病の研究をしたいかもしれません」と申したのが、京都大学大学院内分泌代謝内科に進学するきっかけとなりました。
 進学後、中尾一和教授のご指導の下、小川佳宏先生(現・九州大学教授)の研究室にて、糖尿病と肥満に関する基礎研究を開始しました。“レプチンの中枢作用の解明”という命題を頂き、共同研究として塩野義製薬・油日ラボの勝浦五郎先生にご指南を賜りました。ここでは、メラノコルチン4受容体拮抗薬・SHU9119をレプチンと同時投与した際に、レプチンの食欲抑制作用が全て消失することを認めたことに深く感銘を受けました。これは大発見と喜んでいた矢先、同研究は3ヶ月の差で米国の研究者よりNatureに報告されてしまい、悔しい思いをしたことはいい思い出であります。同時に、多くの文献を読み、アイデアを発案して、実証することの高揚感を覚えました。研究室では、益崎裕章先生(現・琉球大学教授)など素晴らしい諸先輩方のお姿を拝見しながら、研究立案からプレゼン方法を学び取り、基礎研究の重要性とその醍醐味を存分に味わわせて頂きました。。

3. 大学院卒業後、時を同じくしてインスリン抵抗性改善薬(TZD)が上市され、またその当時赴任していた済生会野江病院に動脈硬化測定機器(PWV)も導入された事もあり、糖尿病診療に従事する傍ら、TZDの抗動脈硬化作用の臨床研究を行いました。そこで、TZDによるアディポネクチン上昇、炎症指標・高感度CRPとPWVの改善作用を認め、何とかDiabetes Careにアクセプトされました。これが私の最初の臨床論文となり、臨床研究を始めるきっかけとなりました。
 2003年、京都医療センターに臨床研究センターが発足し、糖尿病研究部室長に就任させて頂きました。2016年より内分泌代謝高血圧研究部長として、糖尿病・肥満症と認知症に関する臨床・基礎研究、具体的にはNHO多施設共同研究、AMED研究や久山町研究との共同研究などに取組んで参りました。また、学会の懇親会で隣り合わせた野田光彦先生(現・国立国際福祉大学市川病院教授)には、AMED研究を通じて臨床研究提案から推進に至るまで、貴重なご指導を賜りました。さらに、共同研究者の先生方を通じて、寺本民生教授(帝京大学)、菅波孝祥教授(名古屋大学)には特任教授として迎えいれて頂きました。
 診療につきましても、2001年より肥満・メタボ専門外来を開設させて頂き、約20年間、素晴らしいスタッフの皆様と、様々な治療プログラムをチーム医療にて展開することができました。
 研究部運営に関しては、研究費獲得、人材獲得・育成から研究推進に至るまで大変な事が多々あります。しかし、これまで何とかやってこられたのは、院内はもちろん院外の先生方、優秀な研究員の先生方、共同研究者の先生方、看護師や管理栄養士の皆様との幸運な出会いがあったからに他なりません。
 このような学会の多くの先生方のご指導により、2019年には京都大学・稲垣暢也教授のご推挙により、日本糖尿病学会第1回女性研究者賞を受賞させて頂きました。
 一期一会の重要性を感じる昨今であります。。

2019年 第62回日本糖尿病学会・授賞式後、ハーゲドーン賞を受賞された稲垣教授との写真

4. 他方、様々な学会にて男女共同参画推進の活動に携わっておりますが、やはり、特に女性医師・研究者は仕事と家庭の両立が難しいと思います。かくいう私自身、妊娠・出産を経験し、さらに介護も重なり、その難しさは身をもって感じております。
 全ての先生方が各ライフステージにおいて安定的・継続的に活躍でき、研究の醍醐味や独自の新発見が得られるよう、男女共同参画推進・環境整備に全力で協力して参る所存です。。

5.最後に、私が、女性医師・研究者や男女共同参画の講演会でお話させて頂いている若手の先生方へのメッセージを〆にして本稿を終えたいと思います。
拙文をここまでご拝読頂きありがとうございました。

  1. やりたいテーマや専門分野を見つけよう!
  2. めぐってきたチャンスに全力投球!
  3. 世界初の発見でワクワク感を味わおう!
  4. 一期一会を大切に、ご縁に感謝!
  5. 仕事と家庭の両立は、工夫次第で乗り越えられる!
  6. 助けてくれている周囲の人々に感謝!
京都医療センター 臨床研究センター
内分泌代謝高血圧研究部メンバー
肥満・メタボ専門外来
チーム医療のスタッフ
内分泌代謝高血圧研究部メンバー
客員研究員の先生方も招いて

更新:2022年4月27日

※所属は掲載当時のものです

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