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それぞれのストーリー

後藤 伸子(Nobuko Goto)

後藤 伸子(Nobuko Goto)

―とにかく笑うことを目標に―

所属

慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科
日本学術振興会特別研究員( RPD )

資格

博士(医学)
日本内科学会 認定内科医
日本内分泌学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本肥満学会 専門医

自己紹介:

医師 17 年目の 41 歳。家族は同じ年の夫と、4 歳、2 歳の保育園女児である。千葉大学医学部糖尿病代謝内分泌内科に入局し、研修を経た後、大学院を千葉大学医学部細胞治療学、東京大学薬学部産学連携講座、京都大学医学部臨床病態医科学で過ごし、京都大学で論文博士による学位を取得した。研修医時代に「肥満症の方の見えている世界は私が見ている世界と違うのではないか」という疑問を持つようになった。現在、基礎研究では 中江 淳 先生の指導のもと、肥満病態モデルマウスの精神神経機能の解析を、肥満症外来では 入江 潤一郎 先生の指導のもと、精神神経機能の研究を通じて減量維持に有効なアプローチを探求している。 2013 年より現所属。

プライベートでの変化に伴う仕事の変化:

肥満症治療チームメンバー(左から4人目が筆者)

京都大学での学位取得の少し前に結婚し、慶應義塾大学に特任助教として着任した後、2 人の女児を授かった。長女は早産のため、生後 9 週間の入院と生後 8 か月までは自宅療養が必要だったため、ベビーシッターさんと夫に週 1 日ずつ、長女の保育をしてもらい、週 2 日だけ非常勤として勤務した。その間、応募した日本学術振興会特別研究員( RPD )に採用され、 2015 年 4 月より、職位変更をしながら仕事を続けた。また、 RPD の期間、次女出産時の産前産後休暇およびそれに続く 4 か月の復職支援期間(週 4 日勤務)を取得した。 RPD への申請に際しては、千葉大学や京都大学でお世話になった女性医師に貴重な助言を頂き、所属に依らない女性同士の連携の重要性を痛感した。

高齢で、しかも着任直後の立て続けの妊娠出産で働く見通しが立たない中、 RPD により雇用継続のチャンスをいただけたことは非常に有難かった。また、 伊藤 裕 先生、 中江 淳 先生、ならびに 入江 潤一郎 先生には、つい目の前の大変さに捕らわれそうになる中、ライフワークバランスの優先順位を意識しながら、研究を諦めず継続することを応援していただいている。さらに、職場の様々な働き方をする女性陣や、学内外の興味を共有する仲間が心の支えとなっている。

妊娠中は、栄養指導を何度受けても実践できず、安静を指示されても頼れる親族がいないため、支援サービスを手配するまでに時間がかかることを自ら経験した。このことは自分自身にとって大きな気づきとなり、食事運動療法が継続実施困難な患者さんの背景に興味を持つようになった。また、次女誕生後は、次女の夜泣きに心身ともに追い詰められた。夫が次女と一緒に別室で寝てくれていた間もあったが、次女が歩けるようになると夜間に母親と一緒に寝たいといって寄って来るようになったため、仕事量や活動範囲を大幅に減らした。次女が 2 歳半を過ぎたころから夜間に起きる回数が減り、その結果余裕が出来、以前から興味を持っていた、コミュニケーションやストレス・コーピングに関する実践的なワークショップや研修に参加するようになり、そこで得られた経験が公私ともに役立っている。 2016 年からは、内科医に加えて、スポーツドクター、運動指導士、管理栄養士、精神社会福祉士による肥満症チーム医療に携わり、食事運動療法の継続とそれに対する心理的支援を、必要とする方へ提供する環境づくりを試みている。ミーティングでは、各メンバーが聴取した肥満症患者さんの治療目標と現状や想いを統合し、アプローチ方法を議論し組み立てている。また、肥満症患者さんのそれぞれが抱えている医療および心理社会的問題を、減量に直結するかに関わらず支援しようとしている(写真)。

日常生活:

7 時起床、 8 時に自宅を出て、自転車で 15 分の距離にある保育園を経由し、電車で 1 時間かけて出勤する。 17 時に職場を出て、保育園経由で 18 時半に帰宅し、食事・入浴・翌日の登園および食事の支度、読み聞かせなどをして、21 時に就寝(ごくたまに起きて家事や仕事をする)という余裕のあるスケジュールで動いている。

実父母は 80 歳近く、日常の支援をお願いしていないが、医師として働きながら 3 人の子供を育てた経験談を参考にしている。義母は、自宅から遠方に住んでいるが、出産時や長期の出張の際には泊りがけで手伝いに来てくれており非常に助かっている。病児の際は、夫婦でやり繰りするしかなく、次女が 0 歳児の際は、認可外保育施設料が二人合わせて月額 15 万円ほど、病児シッター代と併せると 30 万円を超えた時期もあった。病児が続いた時期は、上述の RPD の交流会の講演で紹介されていた「登園日数をグラフ化する」ことを実践し、客観的に自分たちの状況を把握することができるようになり、大変気持ちが落ち着いた。

夫は「仕事を続けて、共働きのロールモデルになることが次の世代にとって重要」と、私が仕事を続けることを応援してくれているが、年々多忙になっており、キャリアや健康への影響を心配している。夫は心理学の大学教員だが、心理学関連分野の研究者は、学問だけでなく父母たちの現在進行形の育児や家事とキャリアをどのように両立させるかについて情報交換を行っており、そこから得られた情報が、自分たちにとっても参考になることが多い。さらに、区の社会福祉協議会援助会員による週 2 回の育児支援に加え、週 1 回の家事代行サービス(掃除と食事の支度)を利用することで、なんとか仕事とプライベートの切り盛りをしている。

現在感じていること:

自分自身の実体験による学びの効果は大きく、何一つ無駄な経験はないことを実感している。長女出産前後は、自分のパフォーマンスの悪さが周囲からどう見られているかに怯えていたが、4 年経ち、ようやく現状を受け入れられるようになった。周囲の手を借りながらではあるが、私自身が笑っていられる余裕を残しながら頑張ることで、色々なことが回っていくのではないかと考えている。

更新:2018年2月28日

※所属は掲載当時のものです

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