The Japan Diabetes Society

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伊藤 純子 先生

伊藤 純子 先生

(いとう じゅんこ)
― 開業は子育てにも糖尿病医としてもよい選択でした ―
2017年8月 掲載
所属:
イトウ内科クリニック (院長)
自己紹介:
名古屋市立大学 平成元年卒業、夫は小児科医で大学教員、 22 歳と 19 歳の大学生の息子がいます。
 
伊藤 純子 先生
1日のスケジュール:
7 時ごろ起床、今はお弁当作りもなく、朝は楽になりました。 9 時から診療を開始し昼過ぎまで、午後診察は 15 時からで週 2 日は 19 時まで。 18 時以降は会社帰りの患者さんが多く、終わるのは 20 時を過ぎます。夕食を済ませ少し運動して気分転換し、翌日のつり銭の準備やカルテの整理、紹介状書きなど、やることはいっぱいあり、眠くなるまで仕事をしています。気づくと 1 歩も家を出ていない日も。水曜を 1 日休みにしてリフレッシュしています。
糖尿病を専攻した理由:
卒業当時はまだ医局制度がしっかり残っていました。自分の医師像は「町のお医者さん」だったので内科医を目指しました。入局したところに糖尿病・内分泌分野の先生がおられ「糖尿病患者が診られれば、ほぼ内科全域に通じる」と言われてその気になりました。
Career:

研究も経験したいと思い、子供を持つ前にと卒後 2 年目からの大学院のコースを選びました。糖尿病患者さんの検体から成長因子などの測定をし、その経験は検体測定系の理解につながり現在も役に立っています。大学院修了後、当時の医局長の計らいで糖尿病医を求めていた実家近くの民間病院に赴任しました。そのころに糖尿病専門医と内科専門医を取得しました。医局からの援助も得て長男を出産。病院の近くに住み、病院の託児所を利用しつつ、両親も育児を助けてくれました。夫は遠距離通勤でがんばってくれました。 2 年後に次男も出産。当時、夫はオランダに留学していましたが、次男の産休・育休ということで約 1 年間お休みをいただき、子供を連れて夫のもとへ行きました。今思うと仕事をしていなかったのはその間だけで、いろんな意味で貴重な時間でした。当時ご迷惑をおかけした医局の先生方に深謝いたします。

帰国した後、外科医院を開業している夫の家に入りました。勤務先を非常勤としてもらい、大学病院の外来と家の医院を手伝うようになりました。育児は夫の母が全面的に協力してくれました。当時、舅は開業 30 年で 70 歳、跡を継ぐかどうかというときに、大学院の研究仲間の薬剤師さんと「一緒に糖尿病をやろう」と盛り上がり、継承を決意しました。糖尿病専門医院をめざして医院を建て替え、その薬剤師さんは隣で CDEJ の薬剤師をそろえた糖尿病専門薬局を展開してくれました。先日 12 周年を迎え、現在、クリニックは完全予約制、 8 割以上は糖尿病患者さんで約 1,200 人の方を管理しています。患者指導のためコメディカルの人数と質の維持に努めており、診療スタッフはほぼ CDEJ です。昨年は看護師の一人に国内留学してもらい糖尿病看護認定看護師の資格を取得しました。診察の仕方もコメディカルが患者さんに深くかかわれるように工夫しています。クリニックでは使用する薬や機器などすべてを糖尿病に特化した形でアレンジでき、専門性を活かしやすいと思います。大変充実した仕事をさせてもらっています。

現在感じていること:
子育てが終わりもっと余裕ができるかと思っていましたが、忙しい毎日です。診察時間は長く、また、診療以外にも経営的なこと、経理に給与計算、求人や労務管理、施設基準の申請・維持、地域の医師会の仕事などもあります。特に、クリニックをやっている先生は皆さんそうだと思いますが、スタッフ確保は年中抱える悩みです。最近は、クリニックの将来の運営・継続について考えるようになり、一緒にやってくれる医師を探し始めました(ご興味を持っていただける方は、是非、見学にいらしてください!)。
メッセージ:

大学生のころ、ある教授が「女性諸君に言っておくが、君たちが医者になるのに一人数千万円以上の税金がかかっている。決して仕事を辞めず、社会に還元するように」と言われました。仕事をしないなんてことは考えていませんでしたが、責任を自覚させられました。

子育てについては、自分は家庭環境に恵まれて特に困ったことはなく、皆さんの参考にはならないですね。子供たちはおばあちゃんたちと保母さんが育ててくれたようなものです。仕事の後で子供に会うのは楽しみで、一緒に過ごす時間の喜びも大きかったと思います。母親としては、せめてお弁当作りだけは手を抜かずにやろうと決め、男子高校生の食欲を満たすようがんばりました。クリニックが自宅兼用でしたので、子供たちの帰宅時、仕事中ではあるけれども母親は家にいるので、いい環境だったのではと思います。子供のサッカーや野球チーム、 PTA などで近所づきあいもでき、クリニックが地元になじむことにも役立ちました。

クリニックのスタッフには妊娠・出産を向かえる年代の人もいます。産休・育休というのは経営側からすると労務手続きなど手間がかかるものですが、自分が子育てしながら働くことができたことの恩返しと思って奨励しています。

今回思いがけずこれまでを振り返る機会をいただき、改めて自分を支えてくれた方々に感謝しなければならないと思いました。成り行き人生ですが、開業は子育てにも糖尿病医としてもよい選択だったかなと思っています。

更新:2017年8月17日