The Japan Diabetes Society

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的場 ゆか 先生

的場 ゆか 先生

(まとば ゆか)
― 心からやりたいことを追い求めるメンタリティ ―
2019年 10月 掲載
所属:
国立病院機構小倉医療センター 糖尿病センター長
的場ゆか 先生
家族写真
自己紹介:

1996年、大分医科大学卒業、九州大学第3内科に入局、1999年に結婚し2000年に長女を出産。2003年に夫の留学に伴い渡米、2006年に帰国し大学で研究活動に従事したのち2009年より国立病院機構九州医療センター代謝内分泌内科に勤務。2019年より国立病院機構小倉医療センターに異動、糖尿病センター長に就任。

夫は循環器内科医で大学講師、長女は現在18歳。

資格:
医学博士
日本内科学会 認定医, 総合内科専門医
日本糖尿病学会 専門医, 研修指導医
日本内分泌学会 認定内分泌代謝科専門医, 指導医
日本医師会 認定産業医
一週間のスケジュール:

月 - 金曜日の多くは病院宿舎に滞在:
8時半出勤、糖尿病・内分泌専門外来週2回、臨床研究業務、病棟カンファレンス、他科コンサルトカンファレンス、多職種カンファレンス、病棟回診、各種会議・委員会、NST、看護大学校講師、18時半宿舎帰宅

金曜夜 - 日曜夜は自宅に滞在、家族団らん、家事、買い物、テニスなど

当直月2 - 3回、随時 学会や研究会に参加

糖尿病を専攻した理由:

学生時代の肥満症を専門とする先生の講義で、きちんと予防するか否かで人生のQualityがまったく異なってしまう、しかし生活習慣の自己管理は非常に難しい、ということを学び、糖尿病や肥満の診療に興味を持っていました。合併症が発症・進行する前に予防することほど有意義なことはないし、じっくり腰を据えて取り組む必要がある疾患特性も自分に向いていると考え、糖尿病を専攻しました。

趣味:

育児中に気分転換のために始めたテニスです。今は、もともとサッカー部だった夫とともに週一回テニスクラブに通っています。最近新しいラケットを購入して腕が上がったような気になり、毎週楽しみにしています。

キャリアとプライベートについて:

医師3年目で結婚し5年目で出産しましたが、内科認定医をとっただけで何も経験を積んでいない早い段階でキャリアを積むコースから外れてしまったという不安感が常にありました。当時は出産後も継続して働いている女性医師のロールモデルが近くにおらず、出産後は勉強不足を痛感しながら市中病院で病棟業務なしの常勤で復帰しました。育児中には十分に恵まれた勤務条件でしたが、それでも長女が小さかった頃は勤務時間やナーシングのやりくりに苦労しました。家族の協力なしには乗り切れなかったと、特に、長女の突発的な体調不良の際には快く1時間かけて駆けつけてくれた義母には本当に感謝しています。

長女が3歳になる頃に、夫の留学に伴い2年半ほどアメリカに滞在しました。渡米した当初は主婦業務に勤しみ、日常的に多様性に富む文化に触れ、現地のテニスチームで汗を流し、幼いながらに異文化になじんでいく長女の成長をみることも含めて、濃厚で楽しい毎日を享受していましたが、どこかにキャリアを中断していることへの割り切れない思いを抱えていました。自分でも何かしたいと考えていた時、夫のアドバイスと応援を契機に、アメリカの大学病院での臨床に参加する機会を得ることができました。診療体制、保険制度、医師患者関係、多職種との責任の所在等含めた仕事の分担など、日本とは大きく異なる診療を経験することができたのは何よりも興味深く、刺激的な経験になりました。帰国後は大学に戻り学位を取得したのですが、当時の所属研究室では前例がないキャリアをたどる私の受け入れに関して、上司の快諾と同僚の理解が得られ、大変助けられました。この間、常にポジティブな夫の態度や快くサポートしてくださる周囲の皆様に感謝するとともに、自分の限界を決めていたのは自分であることに気付かされました。

長女が成長するにつれ時間的余裕が生まれるようになり、その後は基幹病院の専門内科に赴任し、豊富な症例に恵まれ、糖尿病および内分泌の専門医、指導医を取得しました。また、外科とともに肥満症治療チームの立ち上げに携わったり、幾つかの多施設共同臨床研究にも参加させていただいたりしたことで、多くのご高名な先生にご指導いただく機会を得たことは大変貴重な経験でした。

いつの間にか長女も、立派に自我が芽生え、将来を決められるくらいに頼もしく育っていました。

現在感じていること:

キャリアを重ねる初期の育児期間は、自身の未熟さゆえ周りに迷惑をかけることを恐れ、やりたい仕事に手を挙げられない時期もありましたが、今になって振り返ると、そんなことは気にせずにどんどんチャレンジしたほうが本人も成長するし、環境の活性化にもつながる可能性があったのではないかと思い至ります。そのような思いも込めて、女性糖尿病医はもちろん、その指導的立場の先生、配偶者の先生を対象に、女性糖尿病医のキャリアを考える会を2年前に立ち上げました。託児利用数や、男性医師の参加数が増えているのを見るにつけ、女性医師を取り巻く意識の変化を感じます。気づけば医局同門会の女性医師も160名を超え、2016年に九州大学に赴任された小川佳宏教授のご支援のもと、世代や専門分野を超えた交流の会「すずらんの会」が年一回開催されるに至り、その会が“多様な人材活用”のテーマで九州医事新報の取材を受けるなど、女性医師の活動が最近益々活性化してきているように感じます。

今の目標:

子育てがほぼひと段落ついた今年、10年ぶりに異動となり、週の半分ほどが単身赴任のような生活になりました。現在は新天地で糖尿病センターを立ち上げ、専門医5名を擁し多職種からなるチームでの診療の傍ら臨床研究にも力を入れています。

まだまだこれからですが、センター長として、所属している若手・中堅医師や、育児中に常勤復帰してきてくれた女性医師達を始め、チームメンバーが仕事にやりがいを見出し、楽しいと思ってもらえるような環境づくりを心掛けていきたいと思っています。私自身がこれまで育てていただき、サポートしていただいた分、しっかり還元できるような仕事をしていくことが今の目標です。

的場ゆか 先生
糖尿病チームメンバー:後列左から5番目が著者
メッセージ:

糖尿病とともに生きる患者さんとしっかり向き合うにはどんな経験も無駄にはなりません。女性医師の背景は非常に多様性に満ちていますが、どんな形であれ、心からやりたいことを追い求めるメンタリティが、結果的に医師として満足度の高い人生につながるのではないかと思います。

更新:2019年10月8日